最近よく耳にする「先進医療」。あなたはその内容をご存知ですか。日常会話などで「最先端技術を使った医療」という、一般的な意味で使われることもあるのですが、「先進医療」は厚生労働省が定める「高度な医療技術を用いた治療」のことで固有名詞でもあります。
先進医療を受けるとなると、かなり高額・・というお話を耳にされたこともあると思います。ここでは、先進医療の費用とその備え方のポイントをお伝えしたいと思います。
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先進医療とは
先進医療については厚生労働省のホームページの「先進医療の概要」に記載されています。
厚生労働省HP先進医療の概要について
詳細はこちらを見てくださいね。小難しく見えますがざっくり言うと、先進医療と言うのは
- 健康保険制度に基づいた評価療養のうち、
- 治療や手術を受けた日において、
- 厚生労働大臣が定める先進医療(先進医療ごとに厚生労働大臣が定める施設基準に適合する医療施設にて行われるものに限られます)
をいいます。
先進医療は厚生労働省が随時改定をしており、平成29年6月1日現在で103種類となっています。
先進医療の費用は?
「先進医療に係る費用」については全額自己負担
先進医療を受けた時の費用は、次のように取り扱われ、患者は一般の保険診療の場合と比べて、「先進医療に係る費用」を多く負担することになります。
「先進医療に係る費用」は、患者が全額自己負担することになります。「先進医療に係る費用」は、医療の種類や病院によって異なります。
「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。
つまり、一般保険診療と共通する部分は保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。 出典:厚生労働省HP
先進医療は通常診療と比べると、その技術や治療効果が期待できるものが含まれます。しかし、技術料は高額になるものも多く、また健康保険適用外のため全額自己負担となります。また、先進医療の技術料は、先進医療の種類や病院によって異なります。
また、通常の治療と共通する診察・検査・投薬・入院料等の費用は、一般の保険診療と同様となります。つまり、一般保険診療と共通する部分については、保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。
たとえば
総医療費が100万円で、そのうち先進医療に係る費用が20万円であった場合。
- 先進医療に係る費用20万円は、全額を患者が負担します。
- 通常治療と共通する診察、検査、投薬、入院料 は、保険として給付される部分になります。つまり保険給付分80万円の7割が保険給付となります。
- また保険給付の80万円の3割の24万円が自己負担となります。(ただし、高額療養費の適用となる)
先進医療の例

出典:https://linkx.life/lp/coins/pc/1.html?
いざ先進医療を受けたい!となった時には、多くの人が加入している医療保険の日額いくらという給付だけではまかなえないことがわかります。
先進医療に備える先進医療特約とは?
この先進医療を受けようとした場合、保険適用外であり自己負担も多額となるケースも多いため、先進医療の治療を受ける可能性にそなえるものとして生命保険、医療保険、がん保険等の「先進医療特約」があります。
先進医療特約の値段
この先進医療特約は保険会社によって保障額が異なりますが、限度額1000万円~2000万円で、技術料相当額を給付するのものが多いようです。また、その特約保険料(10年更新が多い)は月額、数十円~百数十円くらいで、加入しやすいと言えます。
特約の付け方のポイント
問題はその付保の仕方です。医療保険、がん保険と別々に加入する場合(加入している場合)は医療保険の方に特約付加することをオススメします。
一般的には、がんに関する先進医療が高額になるイメージはありますが、一般の病気でも高額になる先進医療もあります。
平成22年11月に先進医療の適用を受けた「重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する心停止ドナーからの膵島移植 重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病」は、医療費が約1,300万円かかるそうです(福島医大における典型例。第20回高度医療評価会議資料より)。
がん保険に先進医療特約を付保すると、がんの先進医療のみ対応となってしまうため、医療保険に付保することをお勧めしたいと思います。医療保険に付加する先進医療特約はすべての先進医療をカバーしています。
保険屋さんは教えてくれない注意点
最近では先進医療特約の内容として、技術料相当額にプラスして「先進医療一時金」がでるタイプのものも出ています。交通費、宿泊代等にあてられる費用としてあると足しにはなると思います。
なぜこんな言い方かというと、がんの治療でご存知の方も多い「重粒子線治療」は現在日本では受けられるのは5箇所のみ。管理人が住む県には該当の施設がありません。
その医療機関のホームページ等を確認してみると、
- 治療は通院(外来治療)のみ対応
- ただし、施術前に4回ほどは術前検査等のために通院
- 施術も部位によりますが5回、10回と照射しなければならない
ということから、技術料以外の経済的な負担も高額になると思われます。保険に付加する「先進医療特約」で万全!ということはなく、やはり現金の備えも必要ということになります。
先進医療のみで入れる保険も登場!
いざ先進医療を受けたいとなった時の経済的な負担に備える先進医療特約でしたが、入院・手術の費用は公的医療保険で十分という方や、既に医療保険に入っているけれども特約中途付加に対応していないため、医療保険そのものから加入し直さなければならないけど保険料があがっていまう・・など単品で加入したいというニーズがありました。
そこで昨年には、月々500 円で加入できる臓器移植・先進医療特化型保険も発売されたようですね。ただし、特約でつければ、もう少しコストを抑えて加入できるためやはり一長一短といえそうです。さらに、ネット専用商品であること、1年更新であること等、保障として機能するためのリスクは抱えていると感じます。
先進医療特約は必要か不要か?
健康保険が利かない自由診療のすべてが、先進医療に当てはまると勘違いしてしまうことも多いのですが、全てが先進医療とは限りません。先進医療とは厚生労働大臣が認可し、特定の病院や医療施設で行われる治療のみを指します。
先進医療という名がついているにも関わらず、認可されている種類には最先端の治療はほとんど入っていないという現状や、指定されている病院数も少なく、そのため、それぞれの先進医療技術の対象患者のうち、実際に先進医療を利用している人は0.1~0.3%くらいしかいないといわれていいます。
先進医療特約が安い保険料で大きな保障を約束できるのは、裏を返せば、給付金を支払う確率が低いという計算が成り立っているのです。保険会社が損をする商品を販売するわけがないね。
ただし、このことをもって、先進医療特約は使えない特約だとか、役に立たない特約だとかということで不要!と判断するのはどうかと個人的には思います。
20代の男性が「がん」と診断されたとき、医師が親の年収を聞いたといいます。その趣旨はどのくらいの治療費まで払えるのか?ということだったそう。
例えば我が子が「がん」と診断されたら?小学校に通う子どもがいる自分が「がん」と診断されたら?・・経済的な理由で、治る可能性のある治療法を試せないという選択はしたくないと思います。
FPは、ときとして、確率と損得計算だけで必要か、不要か判断しがちですが、元気に過ごしている時の月々数百円を節約したがために、経済的な理由で最良の治療の選択ができなかったということがないようにお伝えしていかなければいけないなと感じます。
まとめ
- 先進医療とは厚生労働大臣が定める先進医療を言い、平成28年11月現在は105種類となっている。
- 先進医療は健康保険の対象外のため、高額になるケースも多い。
- その備えとしては保険会社が医療保険、がん保険に付加できる特約として「先進医療特約」を提供している。
- 先進医療特約は月額数十円~百数十円とわずかな掛け金で準備できるため、健康状態がよければ特約付加できれば安心。
- 先進医療特約は、がん保険より医療保険に付加する方が適用範囲がひろい。
- 先進医療・臓器移植特化型保険も登場。ワンコイン(500円)で加入可。
- 先進医療は受けられる医療機関が厚生労働省により定められていて、遠方になるケースも多く、1回で治療が終わるとは限らない。交通費、宿泊代、仕事を休んで収入が減ることなどを想定して、現金の備えも必要。
月々わずかな掛け金で備えられる先進医療特約はオススメです。しかしながら、万全ではありません。万が一のときに経済的な理由で最良の治療を受けるチャンスを失わないために、元気なうちから病気や怪我の万が一にも備えておきたいですね。